缶バッジの素材は何ですか?土台とその他のパーツ

缶バッジの素材というとどんなものが考えられますか?表面(シェル)、裏面(バックパーツ)に使われている金属や原稿を保護しているフィルムなどがありますね。また、原稿の紙があり、バックパーツにピンやクリップがついています。これらの素材はどのようなものを使われているのか気になっている方も多いかと思います。今回はこれらを詳しく解説させていただきます。
缶バッジの主な素材は4つ
缶バッジを作る時に必要な素材の組み合わせは以下の4つになります。
①表面の透明フィルム(原稿の表面を保護するフィルム)
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②原稿(印刷された紙などの原稿)
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③表面の金属パーツ(シェル、フロントパーツ)
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④裏面の金属パーツ(バックパーツ+ピン他)
表面のパーツに原稿と透明フィルムをマシンに乗せた状態でまずプレスします。そして裏面のパーツをマシンに乗せて再度プレスして缶バッジが出来上がるという流れになっています。
①表面フィルム
表面の透明フィルムは原稿面を傷や汚れなどから守るためには重要な素材になります。表面のフィルムアメリカから日本に缶バッジが伝わってきた頃は原稿の上に透明のフィルムを乗せた状態でプレスしていました。初期の頃はこの透明のフィルムをマイラーフィルムと呼んでいました。
マイラーフィルムとは、米国デュポン社が開発したPET(ポリエチレンテレフタレート)フィルムのことです。薄くて強度の高いフィルムで缶バッジの保護シートには最適です。
表面保護のフィルムは、表面保護フィルムを原稿の上に置く場合と、作業効率を考えて原稿に直接ラミネートをかける場合があります。
表面保護のフィルム を原稿の上に置く場合
原稿の上に置く透明フィルムはPETフィルムが最適になります。なぜかといいますと缶バッジのプレスマシンでプレスする時にかなりの圧力がかかりますので擦れや引っ張りに強いPETフィルムでないと破れてしまいます。PETフィルムでも沢山のメーカーから製造されていますが、基本的には透明度の高いPETフィルムが使われています。
原稿に直接ラミネートをかける場合
先ほども述べましたとおり、近年では作業の効率性が重視されています。なるべくパーツの数を少なく、自動化できるものはオートメーション化して単位あたりの缶バッジの製造数を増やしていく必要があります。そこで、今まで原稿と表面フィルムが別々になっていたものを、原稿にラミネートをかけることで部品点数を減らし作業を効率化している業者さんも出てきました。
弊社もこれと同じく原稿に直接ラミネートをかけています。このラミネートもPETフィルムを使っていますので缶バッジのフチ部分のシワもほとんど気になりません。またデザインとフィルムが密着することで見た目も光沢感が増して喜ばれています。
ところで、ラミネートフィルムというとPETと同じ位使われているのがPP(ポリプロピレン)という材質です。これは商業印刷業界ではよく使われていて、カタログの表紙部分やリーフレットの全面にラミネートがかけられているのを見たことがあるかと思います。
ただし缶バッジのラミネートには向いていません。これはPPという素材が引っ張りに弱くて缶バッジをプレスした時にすぐに破れてしまいます。弊社でも試しに作ってみたところPPフィルムが破れて使い物になりませんでした。缶バッジのフィルム張りを「PP」と言っている業者様もいるようですが、おそらくPETフィルムをそういっているのかと思います。
ホログラムのラミネート
ホログラムのデザインがプリントされたラミネートフィルムを使って、原稿にラミネートしていきます。ホログラムの上に印刷されるのではなく、デザインの上にホログラムが被さった状態になります。缶バッジ全体がホログラムに覆われたような見え方になります。
マットのラミネート
表面がマットの加工が施されたラミネートになります。艶消しになっているため落ち着いたイメージとちょっとしたシルキーな高級感があります。
②原稿(印刷された紙などの原稿)
原稿はロゴやイラスト、写真などが印刷されていますが、一般的には紙が使われています。そして表現したい内容によってはフィルム、ホログラム等色々なものが使われします。
コート紙
コート紙は缶バッジの原稿で一番使われている用紙になります。コート紙の中でもアートコート紙(艶のあるコート紙)、マットコート紙(艶消しのコート紙)などがあります。コート紙はキメが細かいため文字でも写真でもきれいに印刷されるので缶バッジの原稿に相性がよい紙です。
上質紙
会社で使っているコピー用紙と同じ紙質になります。光沢が無く表面は少しザラザラしていますので質感を生かしたデザインには向いていますが、ラミネートを掛けるような作成の仕方には向いていません。
和紙
楮(こうぞ)、三椏(みつまた)、雁皮(がんぴ)などの植物から取り出した原材料がもとになっていて、これらを水に溶かして漉いて作成された、味わいのある伝統的な紙です。弊社でも本物の和紙を使って缶バッジを作っています。表面はかなりザラザラですので印刷はカスレが生じますがそれが風合いを出してますのでお客様には喜んでいただいております。
クラフト紙
クラフト紙は段ボールや茶封筒などに使われている紙です。 クラフトパルプを使って製造された紙で 一般の上質紙のように漂白をしてないので特徴のある色になっています。この紙の特徴はレトロな雰囲気を出すところでしょうか。弊社ではこのクラフト紙を使った缶バッジも製造しています。
銀フィルム(金フィルム)
特殊な紙にアルミ蒸着PET を重ね合わせたフィルムベースになります。ベースが銀色ですがこれに黄色を混ぜることで金色に見せることができます。銀の光沢はまるで鏡のようでミラータイプと呼ばれることもあります。
ホログラムフィルム
ホログラムフィルムはPET基材に光の干渉縞のエンボス加工をしたもので、光の当たり方によってその干渉縞が反射してキラキラと輝く性質があります。 干渉縞の情報記録の仕方によっては立体的に見せることもできます。
蛍光紙
蛍光紙とは光を当てると、その光のエネルギーを吸収して発光するという性質のある紙です。光が当たっている間のみ光るので発光とは違います。一般的には上質紙に蛍光の物質を塗工して作られています。注意を惹きたいデザインなどは蛍光紙が向いています。
反射ベース
反射ベースは、光があたった方向に光が再び帰っていくという材質を使ったシートになります。ガラスビーズが入っていてこれに光が当たると、光が入った方向へ反射して光っているように見えます。
③表面の金属パーツ(シェル、フロントパーツ)
表面の金属パーツは一般的には「シェル」とか「フロントパーツ」と呼ばれています。表面の金属パーツの形状が缶バッジ全体の形状となるため正面からの横の丸みの付け方が重要となります。また金属には色々な素材が使われています。
スチール(鉄:Fe)
スチールは「鉄」と言われいていますが、鉄の元素「Fe」に少量の炭素や元素をくわえられた合金の総称になります。鉄鋼の一種となります
強度はかなり高く、建設資材や構造材、機械などに多く使われています。加工しやすくコストのバランスが良い素材です。しかし、サビやすいため防錆処理が必要になります。
ブリキ(Tinplate)
薄い鋼板の表面にスズ(Sn)のメッキをした金属です。鋼板にメッキを施しているのでブリキもスチールの一種ということになります。缶バッジの金属パーツには一番使われている素材になります。スズのメッキが鉄を保護するためサビにくいという特徴があります。また薄くて軽いので缶バッジのパーツ加工には向いています。
TFS(Tin-free steel)
スチールにクロムメッキを施した鋼板になります。缶バッジの金属パーツではこちらが主流になりつつあります。「Tin-free steel」の「Tin」とはスズのことで、 表面に錫(スズ)を使用せず金属クロムとクロム水和酸化物で処理された鋼板 になります。スズよりも安価で硬く摩耗性もあるという使いやすい金属素材です。
④裏面の金属パーツ(バックパーツ+ピン他)
裏面の金属パーツにはどんなものがあるかといいますと、バックパーツやピンの他マグネットやクリップなどがあります。
土台の金属は「③表面の金属パーツ(シェル、フロントパーツ) 」と基本的には同じになります。その他にバックパーツにつけるピンやマグネットのなどの素材は以下のとおりになります。
フックピン・安全ピン
フックピンや安全ピンに使われている金属には、鉄にニッケルメッキを施したものやステンレス、真鍮などがあります。コスト的には 鉄にニッケルメッキを施した ものが一番安いですが、サビに弱いというところがあります。錆に強いのはやはりステンレスになりますが多少コストが上がります。
マグネット
マグネットには、 フェライトマグネット(Ferrite Magnet) 、 ネオジムマグネット(Neodymium Magnet) 、 ラバーマグネット(Rubber Magnet) があります。 フェライトマグネット は一般的な黒い磁石になります。 ネオジムマグネットは銀色の磁石で フェライトマグネットよりも磁力が高いので小さいものでも強力です。 大きな缶バッジでは ラバーマグネット がメインで使われています。
クリップ
クリップにはプラスチックと安全ピンなどが使われています。弊社のクリップはプラスチックの土台に安全ピンがついたものになります。クリップは衣服の生地を傷めにくく穴が開く心配がないので安心して装着できるようなパーツです。
まとめ
以上、缶バッジの土台や素材について解説させていただきました。缶バッジの素材の組み合わせとしては4つですが、その中でも色々な素材が使われているのがお分かりいただけましたでしょうか。弊社としても色々な素材がある中で安全性を気にしながらなるべく安くお客様に提供できるように素材を選定しています。