缶バッジマシンとは?アメリカ製、中国製、日本製のマシーンの特徴一覧

ここ十数年の缶バッジブームはまだまだ続いてますね。弊社でも沢山のご注文をいただいていて大変嬉しい限りです。また、缶バッジを自分で自作しようとして缶バッジマシンを購入されている方も多いと聞いています。オークションやフリマサイト、ショッピングサイト、ECサイトでも缶バッジマシーンが売買されていますね。安いのから高いのまで金額の幅も大きくどれを選んでよいのか分からなくなります。そこで今回は缶バッジのプロがそれぞれの缶バッジマシンを比較してみようと思います。
缶バッジマシンとは?
缶バッジマシンとは缶バッジを作成するための機械で缶バッチプレス機ともいいます。表のフロントパーツ、原稿、フィルムと裏のバックパーツをカシメるとこによって圧力を加えて塑性変形させ缶バッジのパーツをを密着させる機械になります。
ほとんどの缶バッジマシンは アメリカ製か中国製
缶バッジというとアメリカが発祥のため、缶バッジマシンもアメリカとなります。アメリカのメーカーも何社かありまして、弊社でもアメリカ製の色々なマシンを使っていました。その後は中国でも缶バッジのパーツとマシンを作るメーカーが沢山できてきました。今では中国のメーカーがかなりの数を占めるようになりました。
イギリスなどのヨーロッパでもいくつかのメーカーはありますが、これはアメリカ製のものを真似たような作りになっています。従いましてほとんどはアメリカか中国製ということになります。 ちなみに 日本でも1970年代から缶バッジマシンを販売している会社があります。
安価なマシンに潜む使いにくさに注意
缶バッジマシンは安いものですと8,000円程度、高いもので120,000円程度まで幅広い価格があります。これだけの価格帯があるとどれを選べばいいのか迷いますね。アメリカ製のものは50,000円程度、中国製のものは、 8,000円 ~100,000円程度、日本製のもので120,000円程度といった感じです。
プロの目から見ると、缶バッジマシンというのは実は精密機械だと思っています。なぜかといいますと、缶バッジのパーツの上部分(シェル)とした部分(バックパーツ)と原稿に圧をかけてカシメて成形していきますので、機械自体が正確でないとうまく缶バッジを作ることができません。
圧を均等にかけないと上のシェルとバックパーツがうまくはまりません。マシンの上下が歪んでいたりすると缶バッジができたときに原稿がはみ出すなど不具合が出てしまいます。そいういう意味で缶バッジマシンは精密機械ともいえるかと思います。
正確に缶バッジを作るには機械が高い精度で動くようにしないといけません。それを可能にするのは、まず機械を構成する部品が金属製であることです。こんな当たりまえのことなのですが、安価なマシンにはプラスチックが使われています。安く購入できるようにするためには仕方がないということなのでしょうが、このようなプラスチック製のものはうまく缶バッジができないという不具合が高い確率で出てしまいます。
かなり前になりますが、「Canバッチgood!」の使用感をブログに書いたことがありましたが、この「Canバッチgood!」もほとんどの部品がプラスチック製であるため缶バッジがうまく作れないという不具合が沢山出てしまいました。プロの目から見ますとパーツを乗せる上下の蓋の大きさ等が、プラスチック製のため合ってないように思われました。
そのようなことから安価な缶バッジマシンに手を出すのはどうかな?と思っています。個人でちょっと作りたいとしても不具合の多さには首をかしげてしまいました。
では実際にそれぞれの缶バッジマシンを見ていきましょう。
安定のアメリカ製の缶バッジマシン
缶バッジ発祥の地であるアメリカですのでアメリカ製の缶バッジマシンは扱いやすく丈夫です。通常のサイズ(円形の32ミリ~76ミリ等)なら、多くの缶バッジ製作会社様でこのマシンを使っています。

使いやすく安定性の高いアメリカ製の缶バッジマシン
アメリカ製の缶バッジマシンの特徴
アメリカ製の缶バッジマシンはほとんどすべてが金属でできているので丈夫です。また、金属でできていることで正確に缶バッジを製造することができます。動かし方の間違い等で多少失敗もでますが、安定している印象があります。しいて言えば他のマシンよりコンパクトにできているので、ハンドル部分が短く大きいサイズの缶バッジを作る時に力がいるということでしょうか。
他のマシンのようにアタッチメントでサイズを変えることができないので、サイズごとにマシンを揃える必要があります。例えば32ミリと38ミリと57ミリの缶バッジを作りたい場合はそれぞれ機械が必要ですので、3台マシンを購入する必要があります。記事を書いている時の価格では1台50,000円になります。結構金額がかかりますが安定性が高いので弊社でもこのマシンを使っています。
中国製の缶バッジマシンの特徴
中国製の缶バッジマシンの特徴は何と言っても安いということです。安いもので8,000円程度、高いものでも100,000円程度となります。またアメリカ製にはない、ハート型、星型、猫型、五角形、六角形など面白い形状のものまであります。この異形状の缶バッジは中国製ならではといった感じです。
中国製の缶バッジマシンその1(プラスチック製)
こちらは中国製の缶バッジマシンその1です。多くのパーツがプラスチック製で緑色やピンク、青といったマシンの色になっています。このようなタイプの缶バッチマシンを販売サイトやオークション等で見たことがあるかと思います。価格は1万円以下と購入しやすい価格ですが、先にも述べたようにプラスチック製のため缶バッジを作った時の歩留まりが悪そうです。
このマシンのハンドルは二つになっていて、ホチキスを使うように親指と四本の指で握るような感じでプレスします。力が入れやすいように見えますが、大きなサイズの缶バッジになるとかなり力を入れて握らないときちんとした缶バッジになりません。これと似たような缶バッジマシンをかなり前に使ったことがありましたが、缶バッジを数十個も作ると親指と四本の指が痛くなりました。また、うまく上下の蓋が締まらずに缶バッジにならないものもいくつか出て歩留まりが悪かったです。
こちらはそのアタッチメントになっています。バックパーツを置く蓋の部分は銀色のが入っていて補強するためのようですがこれもプラスチックになっています。ここはフロントパーツとバックパーツをかしめる重要な部分でフロントパーツの端が滑りながらバックパーツを包み込むようにフタが閉まります。しかしプラスチックですので歪んでしまったり、うまく滑らずに中途半端な形で缶バッチができてしまうことが少なくないかと思います。
中国製の缶バッジマシンその2(金属製:回転式)

アタッチメントが回転するタイプです
こちらは中国製の缶バッジマシンその2です。金型が変えられるのでマシンを一台持っていて、金型を変えるだけで多くのサイズの缶バッジが作れる大変便利な機械です。中国製の缶バッジマシンの良いところは、円形だけでなく、ハート型、星形、猫型など異形状の缶バッジが作れることです。弊社でも異形状の缶バッジを作る時はこのマシンを使っています。
中国製の缶バッジマシンその3(金属製:スライド式)

アタッチメントがスライドするタイプです
こちらは中国製の缶バッジマシンその3でアタッチメントを左右にスライドして製作するタイプの機械です。その2では左右に大きく回転させていたものを、その3ではスライドしているのが主な違いになります。左右に回転するよりもスライドさせた方が可動域が狭くなって正確で早く缶バッジを作ることができます。
フロントパーツとバックパーツの金型はスライド部分に一体化しているのでスライド式よりも安定性が高いです。弊社では回転式、スライド式のどちらのマシンも持っていますが、回転式のものより20%~30%位は多くの缶バッチが作れるのではと思います。
スライド式のデメリットとしては適応できる缶バッジの大きさが限られているということです。また回転式と同じく
金型の固定はマグネットなので弱い?
缶バッジマシンその1と缶バッジマシンその2のデメリットは表の金型、裏の金型がマグネットの磁力で固定されるようになっていて、この台座部分についているマグネットが結構取れやすいです。マグネットが取れてしまうと、台座を回転したときの遠心力で金型が飛んでしまうという笑えない話もあります。また、このマグネットは知らない間に取れていたのに気づくという感じですので時々注意して見た方が良いです。

矢印の突起部分が取れやすいのが難点です
また写真の矢印部分の突起ですが、マシン本体の穴にこの突起部分を入れて固定します。この突起部分がネジ式になっていて数千個と作っていくうちに緩んでしまい缶バッジが作れなくなってしまいます。再調整が必要なのですが、こうなってしまうとマシンの構造がわからない人には再調整が難しくなります。簡単に言いますと、回転式の金具の角度とこの突起の位置を合わせながらネジを締めていくという作業が必要になります。この調整が非常に難しいのです。
突起部分が一旦外れてしまったらネジにロックワッシャー等を噛ませて緩みにくくすると良いかと思います。ちなみに弊社ではノルトロックワッシャーを使ってからは10年程度経ちますが一度も緩みが出ていません。
異形状の缶バッジは歩留まりが悪い?
缶バッジマシン自体はほぼ金属製の部品を使っていますので、円形の場合なら歩留まりも良くほとんど失敗が少ないです。しかし、異形状の缶バッジとなりますと失敗が多いと同業他社様からも話を聞きました。ハート型や星形など金型が複雑でることが原因のようです。
具体的には缶バッジをプレスしたときの圧力で紙が破れてしまう、フロントパーツとバックパーツがうまく合わせられてない、出来上がった時に巻き込まれるはずの原稿が外にはみ出してしまうといったことです。
これは原稿の紙の種類や厚み、均等にプレスされてない、プレスの圧力が不足しているといったことによるものです。中国製の異形状の金型の場合は紙やフィルムの厚さがシビアになりますので、それが合っていないと紙が破れやすくなります。
アタッチメントで金型が取り換えられるという便利さがありますが、逆にいいますと金型の固定が甘いのでプレスが均等になっていなかったり、プレスの圧力が不足してしまうということが起きます。この辺のクセがよくわかってくれば歩留まりよく異形状の缶バッジを作ることができるかと思います。
最近販売されている異形状の缶バッジマシンは歩留まりを良くするためか、クレームが多くなったからなのか金型が固定されているタイプがほとんどのようです。我々のようなプロでしたら不具合が出てもどこを直せば良いのか分かっていますが、一般の方が購入される場合はこういったデメリットも考慮された方がいいですね。
日本製の缶バッジマシンもあります!

日本製の缶バッジマシンもあるんです
日本でも缶バッジマシンを作っている会社があります。こちらは「株式会社ダイキ」製の缶バッジマシンです。国産のマシンとしては古く1970年代からありました。弊社でも使ったことがありましたが操作の安定性は高くハンドルが眺めなので力もそれほどいらず扱いやすいという印象でした。さすがに日本製なので缶バッジ製造の歩留まりも良く失敗は非常に少ないです。
使いやすさ等ではこちらをおススメしたいところですが、アメリカ製の機械とパーツが広まっていてパーツの互換性はありませんので選ぶ時は慎重になったほうが良いかと思います。